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クルマ散策:クルマのデザイン講座に行ってみる

Img_1460 「自動車文化講座」という催しに参加して来ました。

 講師の青戸務氏はホンダやオペルのデザイナー、現代のデザイン・ディレクターなどを歴任、現在も大学などで後進の育成にあたっている方。イベントは、神楽坂のギャラリーを会場に毎月行われているそうですが、自分は最近知っての初参加です。

 今回の「お題」はジュネーヴショー2015。とても丁寧に撮影された動画を観ながら、氏の解説を聞くというのが内容です。

 2時間におよぶ講座なので細かいことは省きますが、新しい段階に入ったアウディ、ハチャメチャなプジョー、意図不明な新DSシリーズ、息切れ感のあるルノー、質感の高いフィアットなど、物静かですが的確な解説が印象的でした。

 99%男性の参加者はほとんど常連さんのようで、おそらくはデザイナー関係者も少なくないのかと。たまたま席が隣になった初参加の方は、今年のオートサロンでダイハツ・コペンの着せかえを手がけたサードパーティのデザイナーさんでしたし。

 「毎回恒例」の二次会には行けなかったので、短い懇談時間にひとつだけ「スズキは今回の和田氏と社内のまったく異なる2台を出品したが、この方向性の違いをメーカーはどう扱うべきなのか」について質問をしてみました。

 氏の意見では、今回はトップがデザイン部に一種の刺激を与えたかったのではないかと。ただし、メーカーとしてデザイン力の底上げを本気で考えるなら、ちゃんと和田氏をチーフに迎えるべきだろうとも。

 つまり、外部デザイナーがひとつふたつの新しい提案をしたとして、デザイン部全体が「持ち上がる」ほど甘くはない。新卒採用時に優秀な学生を各社で引っ張り合いになるほど、本当に優秀と言える人材は多くないということで。

 まあ、このまま二次会に行けばもっと深い話が聞けたのかもしれないですが、逆に僕などとても入り込める余地がないくらいディープになりそうではありますね。

 また予定が合えば出かけてみようかと思う講座でした。

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クルマ散策:ジュネーヴショー・日本車概観

Lfsa では、あくまでも写真を見てでの範囲ですが・・・。

 

 レクサスLF-SAは、同ブランド最小クラスの提案。高級ブランドとして歴史のないレクサスは「攻めるしかない」という開発者談を聞いたことがあるけど、いくらコンセプトカーとはいえ、ここまでやらないとレクサスの新型車を表現できないとしたら若干気の毒でもある。

 欧州スタジオによるデザインからは、それでも一定の造形のテーマが読めるけれど、とにかく要素が多すぎて気持ちが悪い。

 実際にはアウディA1などBセグメントを想定しているのでは?という話がある。レクサスのコンパクトは興味深いけれど、これがそのまま出なければいいなとは思う。

Qx30 同様にインフィニティのQX30も怒濤のエモーショナル路線だ。そりゃ全車同じイメージにしたいのはわかるけれど、B・Cセグサイズにこのバカげた深さのキャラクターラインはあまりに強すぎる。いや、市販車ではもっと弱くするからいいっていうんじゃ本末転倒だし。

 これもレクサスと同じでとにかく要素が多過ぎる。なんでこんな小さなボディに何でもかんでも詰め込むんだろう? 一方でQ60はサイズがある分、過剰なゴチャつきは感じないけれど、本当にこのテーマでいいのか?

 日産スウェイもコンパクトの提案で、一部には次期ノートとの報道も。V字シェイプな顔を持ったボディは、強調されたフロントフェンダーから流れるラインや、フローティング風ルーフなど、すでに公開されたスポーツコンセプトやムラーノに結実したレゾナンスと同じ方向だ。

Photo 長い歴史を誇る日産が、こうして流行から若干遅れ気味にエモーショナル路線に突っ走る理由がどうも理解できないんだけど、まあ、やるんだったらちゃんと量産型に反映してほしいとは思う。現行マーチとかノートとか、ああいういい加減なことをやらずに、全車でこういうクオリティ感を出してみてはと。

 スズキはまた別の意味で不思議な提案だ。どこから見てもアルトと同じ和田氏の作であろうiM-4が、歴代のスズキ車の要素を取り入れつつも普遍性を感じる新たなコンパクトSUVを提示しているのに対し、次期スイフトなどと言われているiK-2の、あまりに緩くとらえどころのないデザインは一体どうしたことだろう。

Im4 そもそも、スズキが今回なぜ和田氏を起用したのかは?だけど、その才能を採り入れたからには、その他のデザインとの関係には的確なコントロールが必要な筈だ。いくらスズキが「なんでもあり」を特徴にしているとはいえ、同時出品としてこれはいかがなものかと。

 ホンダは量産型のNSXがいよいよ欧州でお披露目だ。なんだけど、これ、そんなにいいかな? 僕はコンセプト段階からどうもピンと来なくて、フロントはありがちだし、サイドは浮いたCピラーしか目に入らないし、リアはボテっとしてるし。

Ik2 実は、そんなこんながコンセプトを重ねるうちに大きく変化するものかと思っていたんだけど、ほとんどそのまま出てきちゃう感じだ。まあ、デザインも含めて北米主導の開発らしいから、これが先方の「好み」と言われればそれまでだけど。

 三菱コンセプトXR・Ⅱは、東京ショーのテーマをさらに進めたんだろうけど、いよいよスゴイことになってきた感じだ。現行フォルティスやD:5などがまとめて出たときにはデザイン力の深さを見せたものの、コンセプトカーは少々悪のりっぽい。

Nsx いや、もちろんこれが本当に次期パジェロとして出るんだよ、レンジローバーなんか目じゃないよ、っていうならそれはそれでチャレンジングだけど

 ところで、今年の欧州イヤーカーはVWのパサートだった。最近の一貫した横基調ぶりは心配になるほどだけど、しかし仕上げのよさを含めた提案は巧いところで、何をしたいのかが明快だ。

 日本勢ではマツダがデミオや、よりバランスのいいCX-3が好評だったと聞くけれど、勢い余った妙な提案でなく、サクッとメーカーの姿勢を明快に出せればいいのに、なんて思うんである。

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新車心象風景:ホンダ・ジェイド

Photo_2 うーん、何かこう、どこにも引っかからないんである。

 乗用車タイプの3列ミニバンをもう一度成立させようという企画は、3、4代目のオデッセイやストリームの現保有者数を考えればまだアリで、さらに世界戦略車に位置づければなおのこと、らしい。

 加えて、「ちょうどいい!」筈のフリードが立体駐車場に入らないとなれば、そこにもまた需要はあるだろうと。そして、フィットから展開の「エキサイティングデザイン」と最新のHVを持ってくれば、結構いい感じの仕上がりになるじゃないか、なんて。

 ただ、そうやってできたジェイド、どうにもとらえどころがない。ニューカマーとして「何者なんだコイツ」という単純な疑問や、中国市場メインだろという「誤解」なども大きいにせよ、それだけではない存在感の希薄さがある。

 もちろん、このモヤモヤの元凶はエクステリアに大きい。

 「マルチ・サプライジング」のコンセプトの元、低全高でダイナミックなスタイリングという意図はまさにいまのホンダ的だ。1530ミリという全高と上下に広い視界を両立すべく、3列シートが納まった大きなキャビンをボディに沈み込ませるという発想も新しい。

 そうしてキャビンが下がった分、前後のホイールとそれを支えるフェンダーが必然的に盛り上がりつつ強調される。4つのホイールが強調されるのは、いまどきのダイナミックな表現にとって、デザイナーには願ってもない表現だろう。

 けれども、それに沿って微妙な曲線を描くグラフィック下端は、やはり微妙なルーフラインと相まって、どこかとらえどころがないんである。

 リアはフィットの兄貴らしく「くの字」に折れたピラーがハイライトで、シャープなグラフィックラインをさらに強調している。ただ、いささか個性を欠いた例の「ソリッドウイングフェイス」が施されたフロントと合わせてみると、これがまた全体をボヤっとさせ

Photo_4 ジェイド開発の発端は、2009東京ショー出品のスカイデッキに始まったという話があるけれど、CRーZコンセプトとイメージを合わせたこのスカイデッキは実にいいまとまりだった。よりミニバンに近い印象だったけれど、フロントからリアに向かう流れがまず明快だし、サイド面はシンプルでありながら先進感に溢れていた。

 ジェイドはこのスカイデッキに沿って、フィットやグレイス、ヴェゼルのような深く強いキャラクターラインを持たない。そういう意味ではサイズの割にシンプルだけど、とくに要素が足りないとは感じない。また、Aピラーやルーフラインは、細く薄く均一に揃えられていて丁寧だ。

 実際、ある評論家は「これほどまとまりのいいデザインは最近見たことがない」と書いていたけれど、たしかに全体を見ても破綻は感じない。

 けれども、僕にはやっぱり希薄に見える。サラッとまとまっているけれど、何か「芯」のようなものがない。ほとんど同じコンセプトなのに、スカイデッキにあった明快な動感や塊としての存在感がすっかり抜けてしまっている。

 これは、「エキサイティングデザイン」を掲げるいまのホンダデザインの課題じゃないかと思ったりする。勢い余ったラインや、細部の派手な表現がないと新しさを訴えられないという。何か本質を外した方向に向かっている感じで。

 ジェイドはきれいにまとまっているけれど、それは普遍性を持った安定感のあるそれとはどうも違う。気持ちのどこにも引っかからないというのは、つまりそういうことなんだと思うんである。

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新車印象風景:スズキ・アルト

Photo 新しいアルトのデザインが示したものは、かなり大きな意味があるんだろうと思っている。

 もちろん、新規のプラットホームによる走行性能の底上げや、グラム単位の努力で達成した600kg台の重量など、機能・性能面での躍進も見所だけど、僕としてはやっぱりパッケージングを含めたエクステリアのインパクトが大きい。

 でも、それは単にメガネがモチーフの顔がユニークだとか、何となくレトロチックな雰囲気が変わっているということじゃない。軽におけるデザインのアプローチが従来になくまったく新しいことと、その次元があまりに高いところにあることなんである。

 ワゴンRやハスラー、他社ではホンダのNシリーズ、ダイハツのムーヴやタント、日産デイズなど、いまや軽は実にバラエティに富んだ展開を進めて好評を得ている。近日発表のホンダS660もまたその幅を広げそうだし。

 ただ、誤解を恐れずに言えば、そのどれもがそれなりに「想定内」の商品になっている。S660だってNスラッシュだって、面白い発想なんだけれど「まあ、だいたいそんな感じか」という想像、もしくは理解の範囲内ということで。

 けれども、アルトのそれは完全に想定外、想定以上なんである。このプロポーション、面構成、ライン取り、ドアなどのパーツの組み合わせ方等々。初代をモチーフにしたと言いつつ、軽規格という縛りの中では前例のない、まったく新しい佇まいを実現している。

 たとえば、どこか初代ゴルフを感じるとか、いや初代のパンダに似ているとか、そういう時代や生産国籍を越えた傑作をイメージさせるデザインの「技」がここには入っている。

 肝心なのは、これがひとりの外部デザイナーによって行われた(とされる)ことだろう。日産からアウディに移り、A5といった主要車種を手がけた和田智氏が帰国して独立したのは知っていたけれど、一部報道のとおり、仮に氏が基本デザインを手がけたとなれば、その意味は実に大きいと。

Im4_2 つまり、数え切れないほどのニューカマーが日々発表される軽自動車の中で、たったひとりのデザイナーの、たった一度の提案がこれほどの画期的な商品を生み出すという事実は、じゃあ自動車デザインって一体何なんだという、実に根本的な課題を突きつけたんじゃないかと。

 スズキは、たとえばファミリーフェイスなどは作らず、おもちゃ箱をひっくり返したかのようにバラエティに富んだ商品を打ち出すことが特徴だという。だから、新しいアルトにしても、その中のひとつの提案と考えているのかもしれない。

 僕も、決してラインナップ全部をアルトのイメージに合わせる必要はないと思う。ただし、アルトを出してしまった以上、どんな方向であれ、デザインのクオリティに関してはここでじっくり考えるべきだとは思う。

 それは、ちょっとカッコいいとか変わっているとか、そういう次元じゃあない。ワゴンRであれ、ラパンであれ、スペーシアであれ、ユーザーの想定を遙かに凌ぐ、それぞれが革新性を持ったデザイン力の追求である。

 いや、たとえば開催中のジュネーブショウ出品のiM-4もまた和田氏が絡んでいるとしたら、やっぱりデザインの可能性を真剣に考える必要があると思うわけである。

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