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新車心象風景:トヨタ・ヴィッツ(マイナーチェンジ)

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 二段階で残念な感じなんである。

 マイナーチェンジとは思えない派手なTVCFは明るさを前面に出したものだけど、何て言うか過去を封じ込めたい、なかったことにしたい一心のようにも見える。

 栄光の初代、進化の2代目に続く3代目は、同時期デビューの2代目パッソと並んでそれほどに酷い出来で、よくもまあこれだけ安っぽくつまらないクルマにしたものだと呆れたもんである。

 かつてバブル期、「大きく愛のように」立派だったカローラが、その崩壊で「小さく愛のない」モデルチェンジをしたように、トヨタというメーカーは経済状況を安易に反映させたクルマ作りを平然とやってのける。だから、リーマンショックを受けたヴィッツが、歴代の評価など無視した更新をするのは必然だったのかもしれない。

 悲しいかな、そんなクルマでもベスト10の常連ほど売れるのが日本市場であり、安さと自慢の販売力で何とかなってしまう。けれども、おそらく欧州市場などではそれなりに叩かれたんだろうとは想像できる。冷静かつフェアな目を持つ彼の地で、”適当な仕事”は通用しないんである。

 そこで、SAIの仰天チェンジに代表される最新のトヨタデザインの勢いを借り、悪いイメージを一気に払拭してやろうと。

 途中で仕事を止めてしまったかのようにボンヤリしていた顔は、X字をモチーフとした超切れ長のランプ周りに、キーンルックなメッキバーを差し込んで派手に仕上げる。アンダーグリルもまたX字を構成するべく異様に大きな口を開けた。

 冗談みたいなインテリアは造形を一新したという。樹脂のシボを工夫したとか、ドア内張りにファブリックを追加、さらに遮音材の追加や、フロアの補強材追加なんて話もある。

 加えてトヨタ渾身の新世代エンジンへの更新だ。アトキンソンサイクルの新型は効率の徹底した追及で20%以上の燃費向上を実現したという。

 なんだけど、ボディは顔以外は基本そのままで、当たり前だけどいまさら全体の質感が上がるようなことはない。インテリアもシボだの内張りだの、一体何十年前の話をしてるんだって感じだ。遮音材や補強なんかにしたって、つまり前期型でどれだけコストダウンしてたんだって話なんである。

 エンジンも、いまどき過給器付きなど実質的な性能向上を示して当然のところ、結局は燃費競争に止まるべくNAでカタログスペックを賑やかにしているだけだ。新エンジン群は今後ターボもなんて話があるけど、この出し惜しみ感はマツダと実に対照的なところだろう。

 例によってこのマイナーチェンジを雑誌メディアもまた一緒に盛り上げてくれている。驚きのビッグチェンジ、もはやこれはフルモデルチェンジだ、ライバルは戦々恐々だろう、などともう絶賛な感じだ。もちろん、そもそも安普請にしてしまったことへの追求は、ほとんどない。

 トヨタのコンパクトカーの概念を変えた初代を自ら勝手におとしめ、いまさらな手当で今度はこんなに変わったと騒いでみせる。開発に対する一貫したポリシーもなく、ただただその時点の経済状況に合わせた商品作りに終始する。

 そうやって作られたクルマは結局記憶に残ることもなく、歴代の中で静かに埋没する。ヴィッツという名前は残っても、この3代目は難しい。世界を代表する巨大メーカーが、そこで働く自動車人が、そんなクルマ作りをなぜするのだろうか。

 前期型は相当に残念だったけれど、急ごしらえの化粧直しをした後期型もそれはそれで無理がある。そうして二段階で残念なのがこの3代目なんである。

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コメント

3代目のヴィッツが残念な出来なのは分かりますが…メディア褒めてますか?コレ。日本でほとんど見ないフィエスタとかの方がよっぽど持ち上げられてる気がします。まあデザイン的にもフィエスタの圧勝だと思いますが。
すぎもとさん、トヨタがらみになると少し被害妄想が入ってませんかねぇ…以前もトヨタを貶す評論家なんていないとかおっしゃってましたし。
あと、日本の大衆車にターボはあまり必要ないんじゃないかと思います。ポロなんて高速を飛ばさないと燃費もそれほど良くないし、耐久性も心配です。

投稿: 自動車愛好家 | 2014年5月14日 (水) 01時00分

最近、フェイスブックでカーデザイン評論家の千葉匠さんとお知り合いになりましたが、彼もトヨタのデザインにはすぎもとさん同様辛辣なご意見をお持ちのようですね。
まぁ日産の自動車メディアに対するそっけない対応よりマシだとは思いますが、トヨタマーケティングジャパンが広報を仕切るようになってからどこかトヨタの宣伝・広告が変質した気がしますね。86のように地道でオープンにユーザー参加型のイベントをすると思えば、相変わらずドラえもんとかトヨタウンとかどういうメッセージを投げかけたいのかわかるようでわからないCMとか…あとやっぱりクルマ離れへの必死な対策と称しながら、ネガティブな評価や論調から避けたい、取り上げたくないっていうメディアとある意味共謀した広報ってものを感じなくはないですね。
新型ヴィッツは、メインが欧州だから、先行して発表したプジョー・シトロエンとの共同開発車アイゴのXデザインとキーンルックを流用したんでしょうね。
マーチやラティオを擁する日産にも言えますが、やっぱり市場ターゲットを欧州よりも中国やアジアに軸を置いている以上、コストダウンによる弊害も、デザインの出来もこうなっちゃうんでしょうね。
ボクも自動車愛好家さんの仰るとおり、日本でダウンサイジングターボはもうちょっと高速走行ができる環境じゃないと欧州のような低燃費はなかなかできないんじゃないかと…それにあれだけハイブリッドに傾倒していたトヨタにとって、日本国内でダウンサイジングターボをラインナップに加えるのは結構難しい気がしますね。まぁユーザーがハイブリッドなんか飽きた、うんざりだと言い出すなら別ですが、これだけ飼いならされてしまうとどうなのか?

投稿: アクシオム | 2014年5月14日 (水) 17時02分

こんばんは。
 
あの黄色いスニーカーのCMは嫌いじゃないです(笑)
 
前期型の顔があまり好みではなかったので、入り組んだプレスラインなどが無くなって、まぁ随分良くなった気はします(まだ好みではないですが…)が、如何せん全体で見ると…
 
ちょっとアンバランスな感じがしますね…

投稿: とあるイラストレーター | 2014年5月15日 (木) 20時48分

おはようございます。顔面整形ヴィッツ黄色が眩しい(笑) デザインはうーん…キーンルックってゆうんですか?まあ現状では顔だけやけに目立つなあ…統一感に向かってるんでしょうね。エンジンやら内装変えれるなんて金あるなあトヨタ凄い儲かってんですね。私事ですが車検くるし車買い替えたいけど、魅力的な新技術エンジンやら安全装置や今は無いグレードが既存の現行車種に追加やマイナーチェンジで載せてくるの分かってるのに、古くなるであろう現行車を買うのはなんだかなあ…。真面目に困るんですよね…自分には高い買い物だし。 もうメーカーは新型車や目玉技術を売りたいのはわかりますが出し惜しみはいいから新型車と同時に全車種横展開を一斉にしてほしいと思う今日この頃です、ついでにCVTで行くなら馴染めない人用にMT全グレード用意してほしい…無理ですね…売れないし。 ヴィッツに関しては好きな人が買うとゆうよりトヨタだから安心とか、車に興味なし!な人が多そうだからいいんじゃないでしょうか。車台やエンジン、デザインこれからのトヨタに期待します。顔面力自動車…

投稿: さね | 2014年5月16日 (金) 04時47分

ビッグなスニーカー、なんでしょうか、
今度のコンセプトは。そして黄色。
ヴィッツの成り行きに黄信号がともってます、って
僕は受け取ったけれどね。次は赤点でフェードアウトか。
そしてさらに小さい「アイゴ」が登場?
ヴィッツは3代目初期の「男路線」が失敗して
誰に売っていいのか、迷走している感じがする。

おそらく直接のライバルは軽自動車なんでしょう。
同格の他社製品のCMをとんと見かけません。
マーチのCM観たことがない。「マッチのマーチ」今は昔。
「乗ってミラージュ」もね。
豪華になっていく軽自動車に、対抗できるのかヴィッツ。
サヨナラの気配がします。

投稿: 優 路 | 2014年5月16日 (金) 11時31分

3代目ヴィッツについてメディアがしてきたことは「無言を通す」ということでしょう。おおっぴらに批判はできないけれど、褒めるところもないと。
現行スイフトなんか「比べるのが失礼」なくらい出来がいいですから。
トヨタはほんと「貧乏人には厳しい」会社なのだなぁと。資本主義の原則なんでしょうが。

投稿: ネコ | 2014年5月18日 (日) 20時27分

自動車愛好家さん

トヨタはちょっとなあ・・・とはよく思いますが、被害妄想はないですよ。
ヴィッツ、マイナーチェンジ記事読んでみてください。

アクシオムさん

そうですか、千葉さんとお知り合いに。辛らつな意見、書いてほしいなあ・・・。
ダウンサイジングターボ、トヨタ自身が今後展開としてきたわけですが、世界
市場を考えた場合、HVでは限界と判断したんでしょうね。国内でもおそらくは
売り方次第なんじゃないかと。

とあるイラストレーターさん

ドラえもんよりいいCMだと思いますよ・・・。

さねさん

安くて燃費がそこそこよくて、近くで売っていれば・・・ヒットするんですね。

優路さん

フィットのヒット、次期デミオの期待感を考えると、まあ要は自滅ですね。
次期はアクアとのすみわけがポイントでしょうか?

ネコさん

マイナーチェンジでようやく褒めるところができた、ということでの記事
なんでしょうね。

投稿: すぎもとたかよし | 2014年5月19日 (月) 16時25分

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