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雑誌ナナメ読み:興味はクルマだけ?

(★昨日、書きかけのコラムをUPしてしまいましたので、改めて再掲載します)

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 笹子トンネルの崩落は、自分が翌日通る予定だったこともあって、本当に他人事じゃなく、痛ましい大事故だった。

 いまになって実はボルトの緩みがどうのなんて話が出てきているけれど、これに限らず、高度成長期以降、一気に普及したインフラが耐用年数を迎えているのは間違いないのだろう。これについては、新政権の「ロケットスタート」に利用するような話じゃなく、必要なら法整備をしてでもきっちり取り組まなくてはいけない案件だと思う。

 だたここで書きたいのは、これほどの事故でさえ、自動車雑誌がまともに取り上げない現状なんである。

 当たり前の話だけど、クルマは道路という“施設”を前提に作られているのであって、それを抜きにしたままというのはあり得ない。というか、それを抜きにしておくのは責任放棄に近い話だ。べつにTVのニュースみたいに騒がなくてもいいんだけど、雑誌であれば小特集くらいにしてもおかしくはない。大手メディアが情動偏向な報道に終始するなら、逆に雑誌は地に足の着いた取材を行うことも可能だろうし。

 実は道路そのものじゃなく、たとえば高速道路料金にも無関心だったし、いままた話題に上がりつつある自動車関連税についても同じだ。軽自動車規格、安全装備義務化、そして曖昧な燃費測定基準みたいなものも含め、とにかくクルマの周辺課題には見事に手つかずなんである。

 しかも、税金のことに無関心だからといって、じゃあお金の話は別かと言えば、購入の値引きについては補助金も含めて熱心な記事があるから、要はお手軽なことにしか手を伸ばさないんである。さらに、清水草一氏が高速道路についての取材を進めれば、もうその件は「彼」の役目だから、みたいな空気すらあったりする。

 クルマは基幹産業だから、その商品の存在も大きいけれど、周辺に広がる裾野も広い。僕も随分取材したけれど、ETCひとつにしても天下り団体ができてしまうように、行政まで含めればなお広大な背景が見えてくる。けれども、どれひとつをとっても、実際のクルマ生活には絡んでくることなんである。

 そういう意味では、自動車評論家、自動車メディアというのは、たとえば「オーディオ評論家」や「音楽評論家」、あるいはそのメディアとは少々違うんじゃないか。いや、違うと認識しなくちゃいけないんじゃないか。

 もちろん、エンターテイメントとしての側面も大きいわけだから、何でもかんでも抱えて難しく考えろという話じゃない。趣味としての扱いがメインになるのは当然だ。けれども、現状はあまりに「クルマ社会」に無関心過ぎる。

 先日、NHKでTVの未来を考えるといった番組があって、若年層を中心としたTV離れを扱っていた。「どの番組も同じ」「くだらない」「ネットの方が奥が深い」など、想定された理由がガンガン寄せられていた。ネットなどメディア環境の変化はあるにしても、コンテンツの劣化が客離れを招いているのは疑いようもないみたいだ。

 「もうクルマ雑誌なんか読まない」という声も、基本的には同じ話なんだろう。そもそもメインの商品評価自体がつまらないのに加え、先のような幅広さが決定的に不足しているのも実は理由のひとつなんじゃないかと思う。

 そんなこと書いても面白くない、あるいはタブーだみたいな発想は、実は作り手の勝手な思い込みであるというのは、年末の池上彰氏による選挙速報番組の評判でハッキリしたばかりではある。お客=読者は、自分の想定を上回る内容を示されたときに、初めて感銘するんである。

 そういうことにチャレンジしないで、クルマ雑誌離れだの出版不況だの言っても、だからまったく説得力がないんである。

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「雑誌ナナメ読み」カテゴリの記事

コメント

自動車雑誌が道路、交通まできちんと報道できるかというと、一般媒体とあんまり変わらないでしょうね。残念ながら自動車媒体で道路行政、交通をきちんと報道しているのは、すぎもとさんが寄稿されているMag-Xくらいでしょうね。
道路行政となると自動車業界とは別なんですよね。いまでこそ国の省庁は同じ国土交通省なんですが、自動車業界は旧運輸省、道路行政は旧建設省に国家公安委員会のテリトリーで、メディアやマスコミでも省庁の縦割りが影響しているのかもしれませんね。
それに自動車評論家さんが道路行政を語るのをたまに見かけると、必ず海外で試乗してきた際のことを引き合いにして、アウトバーンをはじめとする欧州の高速道路を賛美し、無理やりそれをよしとしようとする風潮がある。しかも、高速道路のことになると民主党みたいに未だ完全無料化を言い出す。維持管理のために税金を導入することも、反対といいかねないし…クルマに乗って能書きは垂れても、クルマを走らせる道路の現状は直視できていない。

これだけ料金を徴収するためにETCはじめ妙に高度なインフラができている割に、笹子トンネルのような崩落災害が自然災害とは別に、人為的、構造的に発生することは許されませんね。料金の徴収目的は、建設費の償還と新路線への投資が第一ですから、維持管理のために多く割かれてはいませんが…これからの公共投資は、建設から維持管理。もうとっくに言われていたことで、いまさらですが。まぁこれからも維持管理を名目に料金の徴収は続くでしょうね。

投稿: アクシオム | 2013年2月 2日 (土) 21時39分

そもそも、クルマ雑誌って報道媒体でも何でもないと思うんです。客観的に見る限り、"はえー、すげー、かっけー(あるいは"ごちー、つえー、かっけー")"車の情報で10代20代のリビドーを持て余しているあんちゃん連中を釣り、そのまま常連読者として飼い慣らすことしかしてないですもん。正確な例えかどうか自信がありませんが、こち亀に出てくる"カタ屋"をなんとなく思い出します。中身のある情報ではなく、情報のフリをした幻想を売っている。300円の雑誌だろうが1500円の雑誌だろうが、それは変わりません。ただ表現の仕方が変わるだけ。おぜぜを積めば積むほど、ペダンティックな美文になりますよ、と。貴方の虚栄心のレベルに合わせて、よりどりみどり。

デトロイトのデザインをハーリー・アールが牛耳っていたころならば実車の世界もそうで、雑誌の世界もそれで良かったのかも知れませんが、そんな時代は彼方に去りました。それに合わせて、自動車もそれを使う人の意識も徐々に変わってきていると思うのですが、それでも自称自動車ギョーカイの人達は古いビジネスモデルにしがみついているというか、他の商売の仕方なんて知るつもりもないし、できないんだろうと思います。そんな人達がやれ走りの楽しさだスポーツカーだと言ったところで、見えてくるのは"保身"の2文字しかないわけですよ。果たして、そんな茶番に今の読者は騙されてくれるでしょうか?哀れなのを通り越して、滑稽です。

そして、すぎもとさんにしても、いつもとうとうとご高説を垂れてくださるこのブログの常連さんにしても、本気でケンカする勇気も根性もないくせにウダウダとこんな事を書いている僕にしても、結局はそこから屈折や乱反射をしただけに過ぎない、同じ穴のムジナなんですよ。

投稿: ほにょ | 2013年2月 4日 (月) 13時45分

雑誌ではないですが、JAFメイトというJAF会員に定期的に送られてくる小冊子(?)は、そういった問題をとても真面目に取り上げているので、とても勉強になります。

今回の崩落事故は、とても痛ましい事故でした…亡くなった方々の御冥福を、心よりお祈り致します。

投稿: とあるイラストレーター | 2013年2月 4日 (月) 21時53分

こんばんは。あの年末の選挙番組は面白く見させてもらいました。いやー政教分離が民主主義の基本なのにハッキリゆうとは、凄い。 自動車に限らずジャーナリズム全般そうですが、この国は情けない?元々旧大日本帝国まして、その前の専制政治から続いてきた歴史からまだまだ権力から独立した公正なジャーナリズムが確立してない?また国民も多くは疑問を感じてないのかなぁ? トンネル事故もそうですが自動車ジャーナリストと呼ばれる著名な先生方には媒体のスポンサー、企業などとのしがらみが多くて不本意ながらも食っていくため、家族を養うなり大義名分あるんでしょ。提灯記事書いたりするのは…。けどその事が余計に自分達の首を絞めるのであるとは思わないのかなぁ。冗談まじりの比喩的文章など清水氏の評論は読んで楽しいし、にもかかわらず首都高を始めとする真面目なジャーナリズトがある側面は素敵ですね。自動車さえもメカニズムから走りまでメーカーのヨイショなら、いっそトンネル事故検証なり、自動車税金関係なりの権力に対して公正に国民に情報を伝えるなりしてほしいかな。伝えるすべがなければ政府に働きかける非営利団体など作ったり。カーオブザイヤーの祭典もいいですけど他に今の国の現状に即して頑張ってもらいたいです。なんてたって他人がどう言おうと、自動車のプロなんですから。道路がちゃんとしてなければ多くをしめてる乗用車は走れませんよね。取材しても金ならないからでは… 業界の事詳しく知らないですが、どーなんでしょ? エコエコゆってりゃなんとかなる訳がない! そのうち全部エコ当たり前になるんですから…。自動車ジャーナリズムもいよいよ変わる時が来たはず 頑張ってほしいです。

投稿: さね | 2013年2月 4日 (月) 21時54分

現在の自動車雑誌には難しい課題ですね。 アクシオムさんが言うようにマガジンXくらいですよね雑誌では・・・あとはせいぜい行政で決まったことを淡々とベタ記事で載せるだけ。

既に今の雑誌媒体のビジネスモデルが「高度経済成長」時のままですので、完全に時代に合わなくなっているのが本当のところで、他の産業さらには日本の社会全体に言える事ではないでしょうか? すぎもとさんが書いてらっしゃるテレビもその最たる産業の一つです。 全ては日本車が最も輝いたバブル期が終わった時に転換期が来ていたのに、日本という国(日本人が?)が転換を拒否したことから始まっていて、結果として全ての産業が行き詰ってしまってしまっていますよね。
メディア関係はすぐにネットのせいにしたがりますが、それは原因ではなく結果です。貧すれば鈍するで、売れ行きが悪くなればさらにスポンサーは神様になり提灯記事だらけになって、それが嫌いな人間がさらに離れる悪循環のスパイラルと、現在はこのパターンにはまっています。これが変わらなければ、雑誌はジャーナリズムとは絶対ならず、広告媒体のままさらに悪いスパイラルに。
自動車雑誌がジャーナリズムとなるには広告の縛りを取り払うと言うことにもなりかねないので、お金にならない記事を載せるのは難しいですね。 うんちく好きな私などは社会問題をどんどん掲載してもらえば嬉しいのですがlovely、自動車雑誌を買う主な読者がそれを望んでいない現在は難しい課題です。逆にネットがあるためにうまく住み分けが出来てしまい、ますます雑誌にジャーナリズムは必要なくなってしまう気がします。これは時代的に仕方ないのではないですかね?現在の種類の雑誌数を維持することはいずれ無理になるでしょうから、生き残りをかけるならばおっしゃる通りチャレンジは必然的にしなければならな雑誌は出てくるでしょうが、それは今ある雑誌ではないかもしれませんね。

投稿: ぷじお | 2013年2月 5日 (火) 23時52分

アクシオムさん

なるほど、メディアの縦割りですか。まあ、記者クラブなんていうのがあるくらいですから、決してないとは言えないですね。
アウトバーン云々というのは行政の問題を「感覚」だけで書くからでしょうか。ちゃんと取材すれば、誰でもそれなりのものは書けると思うんですけど。

ほにょさん

いまの劣化した地上波TVの報道番組で選挙の行方がコロリと行くのを見れば、決して劣化した自動車雑誌にだまされている人がいないとは言えないと思いますよ。ところで、ほにょさんが本気でケンカをするか否かはともかく、僕やコメントを書いてくださる方々を勝手に同じ穴に入れないでくださいね。

とあるイラストレーターさん

JAFメイトは・・・構造的に賛同できない会社なんですけど、しかしそうした記事に多少なりとも取り組んでいるのは間違いないですね。笹子トンネルの早期全面開通は、遺族にとっては厳しい話ですね。

さねさん

長年提灯記事を書いてきたのに、こうして雑誌不況になっているのはなぜなのか? を考えれば分かると思うんですけどね。それよりももっと大事なものがあるんでしょうか、彼らには。

ぷじおさん

お金にならない記事・・・という思いこみが問題なんですね。社会問題だって、取材の視点、書き方によってはとても分かりやすく面白い記事になる筈なんです(池上さんはそれをTVでやってますけど)。それで山をひとつ越せば「お金になる」筈なんですけど、そこに努力や工夫がないんですね。社会問題の時だけいきなりアナリストに書かせたって、そりゃあつまらないですよ。

投稿: すぎもとたかよし | 2013年2月 9日 (土) 14時06分

車自体だけではなく車に関連する事象、所謂モータリゼーションの取り扱いについては、確かに自動車雑誌が疎かにしていた部分でしょうね。
自動車が社会に与えるインパクトが、他の工業製品、嗜好品に比べて多大であることを考えると、このままでは片手落ちに過ぎると思います。
ただ、そういう記事を載せることが、自動車文化を豊かにするかどうかは分かりません。むしろ逆風となる可能性も否定できないのではないでしょうか?
突き詰めて考えれば自動車は必要悪です。昨今の社会状況を考えると、趣味的な領域で自動車が生き残る余地はどんどん狭まるのではないかと。
次世代の自動車についても、EV、HEV、ディーゼル等々多様な手段があって良い、などという傍観じみた見方だけではなく、本当に主流となるべき自動車はどのようなものなのか?
そういう問題を、社会やエネルギーや環境の状況を踏まえて正面から捉え、最終的には結論を出すようなストロングスタイルの記事はなかなかお目にかかれません。
最近問題視されている中国の大気汚染と自動車の関連など、アップツーデートなネタには事欠かないと思うのですが…

投稿: 自動車ユーザー | 2013年2月11日 (月) 22時43分

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