« 雑誌ナナメ読み:スポーティがエライ | トップページ | 雑誌記事:マガジンX10月号発売 »

新車心象風景:日産・エルグランド

Elgrande

 意外なのは、渾身のモデルチェンジの「渾身」が、ド根性方向じゃなかったことだろう。

 先代は、初代ムラーノや先代マーチとの関連性を感じさせるいいまとまりをしていたけれど、価格を含めた販売・営業力に勝るトヨタのライバルは、先代の実にトンチンカンな格好でさえ勝利した。そして、しっかりクラウン化を果たした現行ではもはや圧勝だ。

 じゃあ今度はとなれば、いよいよその好敵手アルファードをトレースするかと思うじゃないか。つまり思い切りドメスティック方向を突き詰めるっていう意味で。

 けれども新型がトレースしたのはフーガなりスカイラインなり、インフィニティとして欧米市場で闘う自社の上級車だったのが意外、ということなんである。そして、それが成功しているなと。

 エルグランドのアイコンである獅子舞のようなフロントと、救急車みたいなリアランプはともかく、FF化で全高を下げたエクステリアのまとめ方がまず巧い。

 実質ブリスターフェンダーの役割をしている前後からの2本のラインは、それ自体が実に吟味された軌跡を描いている。とくにリアからの長いながいラインは、最近のメルセデスや一部のBMWなど、唐突感の拭えない乱暴なものに比べるとかなり自然で繊細だ。

 さらに、そのラインの上面は曲率を変えて動きを持たせる一方、ものすごい上下幅をシンプルな緊張感で持たせた下面の対比もいい。もちろん、太いシルバーモールで伸びやかさを出したウインドウグラフィックとの組み合わせもうまくいっている。そうかあ? と思う方はアルファードのガチャガチャしたボディサイドをもう一度じっくり見てください。

 ブラックやブラウン基調のインテリアもまたインフィニティ方向で、かなりシックにまとまった。つまりフーガやスカイラインと、ライバルのクラウンやマークXとの差がそのまま出ている感じだ。

 恐らく外装を反復したであろうシルバーモールも違和感がないし、濃色系だけでなく、ベージュ内装の落ち着きなどは、ライバルとの差がよりハッキリするところだと思う。つまり演歌なド根性方面じゃないってことが。

 では、一体なぜ日産がそうしたのか、が知りたいところだ。こんな顔した3列ミニバンを売る海外市場があるのか、それとも日産(インフィニティ)の上級車としてごく普通にスジをとおしただけなのか。

 スジをとおす、つまり自社商品に一貫性を持たせたクルマ作りということなら僕は賛成だ。最近、やたらエモーショナル方向な日産デザインの是非はべつにしてね。

 ただ、ここで気になるのはほぼ同時期に発売になったマーチとの違いなんである。

 なんだろう、単に100万円のコンパクトカーと400万円の上級ミニバンの作り込みの違いだけじゃない何か。開発費や技術でもないし、きっと生産国の違いでもない。こう、最後までやった感、というかじっくり感みたいなものかな。

 たぶん両車に見て触れた方なら分かるんじゃないかと思うけれど、この2台には価格では説明できない違いがある。それも何だかずいぶん大きな違いが。そういう違いを持ったクルマが同じ会社からほとんど同時に出てきたところが興味深いなあと。

 エルグランドの渾身のモデルチェンジは、そういうこともまた感じさせてくれるんである。

|

« 雑誌ナナメ読み:スポーティがエライ | トップページ | 雑誌記事:マガジンX10月号発売 »

「新車心象風景」カテゴリの記事

コメント

見ましたがなかなかいいですね。
EV、マーチのなまず面シリーズと明らかにデザイナー、監修してる人間が違うのを感じます。
いいものと明らかにアホデザインとの差が歴然としてます。
いすゞから着たお兄さんは最近仕事をしていないんでしょうかね。

私んとこの裏の整体師のお兄さんも買え変えるそうです。
私には必要はないが、なんだか乗って見たいナァ~と感じさせる一台ですね。

投稿: 佐衛門 | 2010年8月23日 (月) 14時29分

こんにちは。
エルグランドとマーチの違いは、やっぱりありますよね。
でもそれって、クルマとして目指す方向の違いだと僕は思います。

エルグラは「国内最高峰の高級ミニバン」という広そうで狭いユーザー層がしっかり定まっていて、そこを目指しているわけですよね(基本を共用する次期クエストは味付けがかなり違いますし)。対してマーチは、世界160カ国で“はじめて車を買う層”をターゲットに、コストダウンを最優先して作ったクルマですから。
マーチのコストダウン技術やアイデアも実はかなりチャレンジングなプロジェクトであり、そのこだわりこそが新型マーチに込めた開発陣の「やり遂げた感」です。現代においていいか悪いかは別問題として、高性能を低価格でという「本来の日本車の作り方」なんですよ。

むしろ、100万円を切るようなコンパクトカーと400万円の上級ミニバンから「同じニオイ」が漂っていたら日産は自動車メーカーとして終わりだと思います。コンパクトカーと同じニオイの400万円級ミニバンなんて、欲しがる人はいませんからね。


投稿: TK | 2010年8月24日 (火) 22時41分

エルグランドのデザインのまとめ方はうまいと思いますが、低床にしたプラットフォームというかパッケージ、実のところ狭く感じますね。車高は確かに低く乗りやすかったけど、それにつられて室内高も随分低くなったように感じるし、新型フーガ同様外寸が大きくなったのに微妙に圧迫感を感じますね。これって意外とインフィニティ向けのエモーショナルなデザインの影響だったりして?
それにセカンドシートのオットマンをまともに使おうとすると、サードシートは座れるか座れないかきわどい間隔しかなかったし…
果たしてこのモデルチェンジは使い勝手の面でよかったのか?
あとインフィニティブランドの高級車と日産ブランドの高級車をいっしょくたにしていいものなのか?日本じゃインフィニティが売られていないからいいと言っても、ブランドを別にしている意味がホントないような気がします。
エルグランドくらいもう少しプレーンに作ってもいいような気がしますが…
日産もやっと最近では、マーチをはじめとするエントリーモデルの部品を高級車に使わなくなりましたね。

ps.この夏、弊社でエクストレイル20GT 6速AT購入いたしました。とにかくよく走り、よく…(黒煙)吐かない、よく…(軽油)喰わない、真面目なクルマですね。長距離を走れば走るほど経済的なクルマです。

投稿: アクシオム | 2010年8月25日 (水) 23時13分

佐衛門さん

監修している人、やっぱり違うんでしょうかね。
まあ、リーフはちょっともう論外な感じですが・・・。

TKさん

本文にも書いたとおり、マーチにも新開発エンジンやアイドリング
ストップ、ポテンシャルの高い新プラットホームなど技術は満載で
す。ですからそういう話ではないですね。

「同じニオイ」は価格とは無関係だと僕は思います。たとえばマツダ
のデミオとアクセラ、アテンザは僕には同じニオイがします。あるい
はヴィッツやラクティスとマークX、クラウンも然りです。

要はまとめ方、そのための方向性、企画のブレ、もしくは成否、そ
ういった点が影響するんだと思います。

アクシオムさん

全高は下げたけど低床で上下空間はある。でもやっぱり狭く感じる
っていうのは前のステップワゴンと同じですね。その辺はスタイリン
グを含めた人の感覚の特徴なんでしょうか?

日産はキューブ、リーフ、ジュークなど、エモーショナル方向が明確
ですね。ただ、インフィニティとは車格が違うので、その点でニュアン
スの差を出すのかもしれないですね。

それにしてもクリーンディーゼル、いいですねー。

投稿: すぎもとたかよし | 2010年8月26日 (木) 13時10分

う~ん。 こういった「箱」車ってあまりデザイン的に興味が無いというか…

実用性のみ考えた車なら興味あるんですが、日本のミニヴァンて、値段の低い物は昔の「カローラ」「サニー」からちょっと上のクラスで、高額なのは、「クラウン」「セド・グロ」に取って代わった変な成り立ちですよね。

だから、高級!?なミニヴァンというものが、「箱庭」に見えてビンボー臭いんですよ。空間の中に目一杯贅沢品を並べた、私の親の世代の「団地」という感じ。

そして、またやってしまった残念ポイントが、ボンネットがダンパー式ではなくまた、「つっかえ棒」な所。あぁ、これで、「KING」ですか?

あとは、前から、思っているのですが、パッセンジャー側の「オットマン」て平らにした状態で前面衝突した時に、脚の安全性って大丈夫なのでしょうか?
私は、何か怖いことを考えてしまいます。 顔は、残念ながら強い高級車にそっくり(あちらが、パクリですが)でも、きっと、売れますよ、日産のアレが欲しかった人に…実は、強い高級車の顔のみ好きなんです、お恥ずかしながら。エヴァンゲリオン2号機みたいでsmile

投稿: ぷじお | 2010年8月26日 (木) 16時03分

ぷじおさん

まあ、そもそも北米の「本物」のマルチシートバンを無理矢理
日本向けに縮小したもんですからヘンでビンボーくさいなクル
マに間違いないですよね。

もともとパッケージを疎かにしたセダンやハッチバックが多かっ
た日本車ですが、それが妙な方向に向かってしまった感があ
ります。でも、フィットのようなクルマが生まれた背景にもなった
のかもしれませんね。

投稿: すぎもとたかよし | 2010年8月28日 (土) 09時40分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/97786/36307354

この記事へのトラックバック一覧です: 新車心象風景:日産・エルグランド:

« 雑誌ナナメ読み:スポーティがエライ | トップページ | 雑誌記事:マガジンX10月号発売 »